身寄りがないまま高齢期を迎えた場合、「自分が亡くなった後、遺産や不動産はどうなるのか」「手続きをしてくれる人がいないのではないか」といった不安を抱えることも多いでしょう。こうした状況は年々増加傾向にあり、具体的な対策がわからず手つかずのまま…というケースも見受けられます。ここでは、長年不動産業界に身を置いた筆者の経験も踏まえながら、必要な準備や安心につながるポイントを解説していきます。
身寄りなしの終活に必要な手続き
身寄りがなくても、きちんと手続きを整えておけば、財産の行き先や死後の事務処理に関する心配を大きく減らすことができます。たとえば、公正証書を使った遺言書の作成や信託契約の活用など、準備段階で押さえておくべきことがいくつかあります。ここでは、代表的な手続きとそのポイントについてご紹介します。
遺言書の作成
遺言書がないまま亡くなると、相続人がいない場合は財産が国庫に帰属してしまう可能性が高くなります。自分の意志を正しく伝えるためにも、公証役場で公正証書を作成する方法を第一に検討してみましょう。形式的な不備が起こりにくく、改ざんや紛失のリスクもほぼゼロに抑えられるため、多くの方が採用している手段です。
財産管理と信託の活用
身寄りがいない方の財産管理では、信託制度を利用する方法も注目されています。財産を自分名義のまま第三者に管理を任せることで、死亡後の処分や用途を細かく指定できます。弁護士や司法書士に受託者を頼むケースもありますので、周囲に親族がいなくても安心して任せられる仕組みを整えられるのがメリットです。
自分の死後の手続きをスムーズにするために
自分がいなくなった後に、どのように不動産や遺品を整理すればいいのか、誰が処分に関わるのかといった事柄は、意外と見落とされがちです。近年では自治体や専門家によるサポートが充実してきましたので、早めに情報収集を行うことで、後々の混乱やトラブルを防ぐことができます。
行政や専門機関のサポートを活用する
住んでいる地域の役所や地域包括支援センターでは、独居高齢者のための相談窓口を設けていることが多いです。成年後見制度や安否確認サービスなど、自分ひとりで対応が難しい場合は行政の力を借りましょう。また、司法書士や弁護士、不動産会社などの専門家に依頼する際も、役所から紹介を受けることで信頼度の高いところを選ぶことが可能です。
不動産や遺品整理の事前準備
所有している不動産を残すのか、売却するのか、それとも誰かに任せるのか、方向性を決めることは終活の大きなテーマです。立地や市場の状況によっては売却に時間がかかったり、思ったほどの価格がつかないこともありますので、早めの査定や相談が重要です。
また、遺品整理を行う業者は数多く存在しますが、トラブルを避けるためにも、料金や作業内容をしっかりと明示してくれる優良企業を見極めて選ぶことが大切です。
FAQ
身寄りなしの終活を進めるうえで、よく寄せられる質問とその回答をまとめました。疑問点があれば参考にしていただき、必要に応じて専門家への相談も検討してみてください。
Q. 遺言書がないとどうなるのでしょうか?
A. 遺言書がない状態で相続人もいない場合、財産は国庫に帰属します。自分が築いた財産を有効に活用してほしいという希望があるなら、早めに遺言書を作成しておくことが望ましいです。
Q. 相談先はどこがおすすめですか?
A. まずは役所や地域包括支援センターなどに相談し、必要な制度の情報収集を行うのがおすすめです。そこから司法書士や弁護士、不動産会社など、それぞれの専門分野に強い業者を紹介してもらい、ワンストップで対応が可能なサービスを検討すると手間が省けます。
Q. すべての手続きを一括でお願いできるサービスはありますか?
A. 死後事務委任契約などを扱う事務所では、葬儀の手配から遺品整理、不動産の処分まで一括して任せられるプランがあります。身寄りがない方にとっては大きな安心材料となるため、複数の業者を比較検討したうえで決定するとよいでしょう。
まとめ
身寄りがなくても、必要な手続きを計画的に進めることで、死後の財産や不動産の処分に関する不安をかなり軽減できます。特に公正証書の遺言書、信託制度の活用、行政や専門機関によるサポートの利用は、実務的にも安心な選択肢といえるでしょう。年齢を重ねて判断能力が低下する前に準備を始めることで、後悔なく自分らしい終活を実現する道が開けます。